M&Aの相場とは対象企業を譲渡・譲受する時に相応しいとされる金額です。
買い手側と売り手側ではM&Aの相場観に差異が生じるため、その価格に折り合いをつける必要があります。満足できるM&Aを実現するには相場に関する知識をしっかり身につけることは必須と言えます。
高い相場金額はM&A成立を困難に
M&Aの相場金額がどのくらいか理解していないと、相場よりも安い価格で事業売却してしまったり、反対に相場よりも高い価格で企業買収してしまったりする危険性も考えられます。
M&Aの相場は、M&Aの対象となっている会社の価値を考慮に入れて算出され、事業売却や企業買収の際に支払う金額の目安とされます。
実際のM&Aでは、基本的にM&A仲介業者を介して売買交渉が行われます。そのため、実際に支払われる金額は買い手と売り手の見積もりをすり合わせて決定されることも多いです。
会社売買の相場価格は会社買収・事業買収をする買い手側の相場価格と、会社売却・事業売却をする売り手側の相場価格では多少の相違があります。買い手側の立場で考えた場合、会社売買の相場価格は低く見積もる傾向にあります。
適正な相場とは
M&Aの相場価格は会社の価値を考慮に入れて算出としましたが、会社の価値は目に見えるものだけではありません。会社買収後は、買収した会社のオーナー・経営者となるケースが多いです。
会社のトップが代わったことで、業績が落ちたり、退職者が増えてしまったりするリスクも伴います。このようなことから、買い手の相場金額は低めに見積もられるものなのです。
M&Aによって会社を売却したり、事業売却したりする売り手側の相場価格は、買い手が考えている金額よりも高く見積もられる傾向にあります。ただし、売り手側は自分たちの企業・会社・事業を過大評価しすぎる部分もあり、高い相場金額を提示してしまいがちです。
あまりにも会社の価値からかけ離れた金額を提示してしまうと会社売買・M&Aは成立しにくくなってしまいます。
不動産賃貸業は資産価値がファクターに
M&A価格は、売り手と買い手が合意できる範囲内で決まります。これを超えた価格帯でM&Aが成立してしまうことは、どちらかがその場の勢いで不合理な選択をしてしまわない限り起こりません。
M&A相場価格は一般的に4億円~5億円と言われます。M&Aの価格を理解する上で非常に重要なことは、買い手がいくらまでなら出せるかという判断を主観で行っていることです。なぜなら、M&Aは過去ではなく事業の将来の業績を売買する取引だからです。買い手は常に将来の利益を想像して、それに見合う価格で買おうとします。
もうひとつは中小企業M&Aの価格を左右する重要な要素が「稀少価値」です。M&A対象会社は究極の1点ものであり、他社に買収されたら永遠に買収できなくなってしまいます。
小売業なら立地、製造業なら技術や特許、消費財ならブランドなど、他社がお金をかけても真似できない財産を持っている会社なら、たとえ赤字であっても価格が付くことがあります。
M&Aの価格相場は業種によるところが非常に大きいです。たとえば不動産賃貸業の場合、企業の売上高や利益はほとんど考慮されず、持っている資産の価値が最大の価格形成ファクターになります。
一方、調剤薬局の場合は1店舗1店舗の売上、応需処方箋の枚数や診療科、病院との位置関係が調べられ、店舗ごとの価値が査定されます。そこに人材の充足状況を加味して相場観が形成されます。M&A価格の相場形成は業種次第でバラバラで、全業種一律の相場把握は絶対にできないと断言できます。
仮に同じ小売業でも、ドラッグストアと地場スーパーでは価格の付き方がまるで違います。幅広い生活用品の安値仕入が求められるドラッグストアと、生鮮食品の目利きや鮮度管理が求められるスーパーが、同じ評価軸で評価されるはずがないからです。
まとめ
M&Aを実施する前に相場を理解することが非常に重要です。やみくもにM&Aの手続きを進めるのは危険です。M&Aの相場がわからなければ、買収でかなり高額な費用を要求され、低い金額での取引を要求される可能性があります。買収側と売却側は、M&A相場への思惑に相違があります。
そこには、目に見えない売却側の会社の歴史と売却後の会社の未来が大きく関係しています。見えない利益を価値として考えるのは、非常に難しいですが、その価値をできるだけ数字に換算しなければ、M&Aは実行できません。