M&A

M&Aを実施することで、譲渡企業は譲受企業の子会社になることがあります。子会社は親会社の傘下にある企業であり、親会社は自社の傘下にある他企業の経営の意思決定を支配することができます。

しかし、子会社化のメリットを知らないために、自社の子会社化に踏み切れない方も多いのではないでしょうか。そのため、子会社化の仕組みを十分に理解し、親会社と子会社双方に利益をもたらす方法やメリットを知る必要があります。

親会社は子会社の意思決定を支配

子会社化するにはM&Aの対象会社の議決権の過半数以上を取得する必要があります。それにより、経営権を手に入れ、取締役の選任や解任や配当金の決定など可能になります。

また、3分の2以上の議決権を取得していくことで定款変更、組織再編、株式の併合など重要事項を決める権利が得られます。

M&Aの対象となる会社の株式を100%取得した場合が「完全子会社化」ということになります。完全子会社化することで、対立的な株主を排除し、迅速な意思決定・企業経営ができるようになります。

事業承継の場合は、会社の株式100%を譲渡することが前提となります。外部企業による子会社化だけでなく、企業の内部の場合ではある事業部門を切り離し、独立させて新たに法人を設立することで子会社化するケースもあります。

親会社は子会社の株式の過半数を取得していることから、傘下となった子会社の経営の意思決定を支配することが可能です。

子会社化のメリット

微笑む経営者
会社は経営が順調に推移し事業規模が大きくなるほど組織は巨大化します。子会社化は企業を拡大し経営体制をスリム化することでリスクを回避する有効な手立てとなります。

親会社が他社や内部組織を子会社化するために別会社を新たに設立した場合、最大で2年間の消費税免税措置を受けることができます。この制度を活用して、例えば子会社の収支が黒字化している際には、子会社の利益分を親会社に移転することで節税対策を図ることが可能です。

経営のスピード感

子会社化のメリットとしては第一に内部組織を子会社化して経営の効率化を図ることで、意思決定権が移行すし経営のスピード感が高まります。それだけでなく、後継者問題の解決にもつながります。

後継者の候補者が複数人存在する場合は1人に絞りきることで社内紛争が生じかねません。子会社化し分散化させることでそうしたリスクを回避することにつながります。

その他には、部門などが独立することで経営の自由度が増えることや大手企業の子会社となることで子会社の信用度が高まります。

損益が明確になりやすい

第二に事業損益が財務諸表などを通して、より明確になります。子会社として維持することで、取得した事業の損益管理が正確に維持でき、経営責任も明確になります。事業会社で複数の事業部門を有する場合、間接部門の配賦などが曖昧となり、事業ごとの損益が明確にならないことがあります。

機動的な売却が可能

第三に事業が成長することで、子会社の株式上場をすることができ、事業がうまく行かなかった場合にも子会社をそのまま売却するなど機動的な対応が可能です。

ブランド力を保つことができる

第四に製品ブランドや会社イメージの連続性を保つことが可能で、消費者や顧客にネガティブな印象を与えずに事業を継続することができます。

子会社化のデメリット

悩む経営者
一方、デメリットとしては子会社として維持した場合、総務や経理など間接部門の効率化が進みにくい傾向があるのが難点でしょう。コスト削減のシナジーを獲得しづらい場合があります。

総務や経理の効率化に注意

また、大手企業に買収されることで、買収された会社は大手企業の信用力、ブランド力、イメージを享受できる一方で、子会社のままだとできない場合もあります。特に注意すべきは知的財産の取得目的の場合です。

生産拠点や生産技術、また特許権などの知的財産の取得を目的としたM&Aにおいては、子会社として維持した場合、組織の効率化を進めることが難しくなることがあります。

不祥事が発覚した場合の影響力

子会社することで対外的な信用力が高まることもありますが、グループ内で不祥事が発覚した場合などは、グループ全体の信用力が低下することが懸念されます。

損益通算が行えない

課税においてもデメリットとなるケースがあります。例えば、企業が複数の事業で所得を上げている場合、そのなかで赤字が生じている際は一定期間内の利益と損失を相殺できる「損益通算」を行うことで、税金の額を減らすことが可能です。

しかし、子会社化することでこれができなくなってしまうので、該当企業にとってはデメリットになってしまう可能性があります。さらに、子会社の経営が赤字になった場合、子会社の社長が利益責任を負うことになります。

まとめ

M&Aの子会社化や自社から特定事業を独立させて子会社化することを考えている経営者の方は、子会社化することでのメリットやデメリットを踏まえたうえ、よく検討して自社にとって最適な方法を選択してから、実行されることをお勧めします。

おすすめの記事