札束とグラフの積み木

新型コロナ感染症拡大に伴う補助として、国民1人あたりに10万円を給付する「特別定額給付金」や、中小企業や個人事業主の事業継続を支援する「持続化給付金」などさまざまな施策が実施されています。

その施策の一つとして挙げられるのが、M&Aを推進する「経営資源引継ぎ補助金」です。
新型コロナの影響によって事業存続が難しくなったことから、M&Aによる事業売却を検討する経営者の数が増大しました。

このような社会的背景が経営資源引継ぎ補助金が設立されたことの要因です。
当記事では今M&Aを行う上で知っておきたい経営資源引継ぎ補助金の対象要件や、手続きの流れなどを紹介します。
※情報は掲載時点(2020年7月14日時点)のものです。最新ではない可能性がありますがあらかじめご了承ください。

経営資源引継ぎ補助金とは

経営資源引継ぎ補助金とはM&Aが円滑に行われることを支援する制度です。
新型コロナウイルスの緊急経済対策のうち、中小企業の事業承継支援策の一つとして設立されました。

経営資源引継ぎ補助金は、M&Aを行う際に発生するコストを負担し、主に中小企業を対象としています。

また、2020年5月21日にデロイトトーマツ ファイナンシャルアドバイザリーが事務局となることが発表されました。

最初に、経営資源引継ぎ補助金の申請対象となるコストの一覧を紹介します。

  1. 専門家への仲介手数料
  2. デューデリジェンス(企業の資産価値評価)費用
  3. 企業概要書作成費用
  4. 既存事業を譲渡する際の廃業費用 など

M&Aを実際に行う時だけでなく単に検討したいだけという時も申請可能であり、非常に幅広いコストが経営資源引継ぎ補助金の対象となります。

支給額はどれくらい?上限額はある?

M&Aに関する非常に幅広いコストが経営資源引継ぎ補助金の対象であることを紹介しましたが、支給額はどの程度になるのでしょうか。

結論から申し上げますと、支給額は「支出額の3分の2」となります。
また、買い手の上限額は「200万円」、売り手の上限額は「合計650万円」と設定されています。

売り手の上限額に「合計」と記載されているのは、売り手の場合は「専門家への依頼費用」と「廃業費用」が支給対象となるためです。

もしM&Aを行っても廃業をしない場合はその上限額は、買い手と同様に「200万円」となります。

支給される補助金のモデルケース

上記にて説明した経営資源引継ぎ補助金の支給額や上限についてより深くご理解いただくために、モデルケースをご紹介します。

モデルケース①:M&Aにかかるコストが150万円だった場合

150万円×2/3=100万円

上限額200万円>100万円であることから、この場合は100万円が支給されます。

モデルケース②:M&Aにかかるコストが450万円だった場合

500万円×2/3=300万円

上限額200万円<300万円であることから、この場合は200万円が支給されます。

経営資源引継ぎ補助金の対象要件とは?

上記にて経営資源引継ぎ補助金は、M&Aに関する幅広いコストが対象となることやその上限額などを説明しました。

ここでは、支給を受けるために経営者が満たすべき要件を紹介します。

中小企業の対象要件

中小企業が満たすべき経営資源引継ぎ補助金の対象要件は、業種によって分類されています。

  • サービス業の場合
  • 資本金の額または出資の総額が5,000万円以下の会社または常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

  • 小売業の場合
  • 資本金の額または出資の総額が5,000万円以下の会社または常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人

  • 卸売業の場合
  • 資本金の額または出資の総額が1億円以下の会社または常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

  • 製造業やその他の業種の場合
  • 資本金の額または出資の総額が3億円以下の会社または常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人

    個人株主や大企業は対象となる?

    中小企業でM&Aを実行する際、個人株主が専門家への仲介手数料を負担するケースはよく見られます。

    この場合に個人株主も対象となるかどうかは現在調整中だそうです。
    また大企業は対象外となります。

    対象要件を満たしても必ず支給されるわけではない

    後に改めてご紹介しますが、経営資源引継ぎ補助金を支給されるために国の審査を受ける必要があります。
    そのため上記の対象要件を満たしても、必ず支給されるわけではないことをあらかじめ知っておいてください。

    新型コロナウイルスの影響が無くても申請可能

    上記の対象要件を満たした場合は、新型コロナウイルスの影響がなくても経営資源引継ぎ補助金の申請が可能です。

    申請時にM&Aを行なったもしくは検討した理由を説明をする必要も特にありません。

    経営資源引継ぎ補助金の手続きの流れ

    腕を組む経営者
    これまで経営資源引継ぎ補助金に関して、上限額や対象要件などを紹介しました。
    それでは次にその手続きの流れ見ていきましょう。

    期間内に申請を行う

    まずは期間内に申請を行います。
    公募期間は以下です。

  • オンライン申請の場合
  • 20207月13日(月)〜2020年8月22日(土)19時まで

  • 郵送申請の場合
  • 2020年7月13日(月)〜2020年8月21日(金)消印有効

    国が申請内容の審査を実施

    国が申請した内容の審査を実施します。
    この審査期間は2週間程度です。

    交付決定後、申請者が期間内に対象コストを支払う

    審査後に経営資源引継ぎ補助金の交付が決定(9月中旬予定)されれば、まず対象コストを支払います。
    あらかじめM&Aに関するコストが支給されるわけではないことにご注意ください。

    後に詳しく紹介しますが、支払い期限は2020年9月中旬(予定)〜2021年1月15日までとなります。

    実績が認められると補助金が支給される

    対象コストを支払った後にM&Aを行なった実績を事業完了後原則15日以内に報告し、内容に問題がなければ補助金が支給されます。

    なお、補助金の支給は2021年3月下旬までに行われます。

    手続きの流れからわかる注意点!支払いの締め切りに注意

    上記にて経営資源引継ぎ補助金の手続きの流れを紹介しました。
    公募期間などは調整段階ですが、予定通りに進んだ場合は一点注意しなければならないことがあります。

    それは対象コストの支払い期限が短い期間に限られることです。
    早速以下にて詳しく解説いたします。

    交付決定日や支払い期限はいつになる?

    まず、経営資源引継ぎの支給先が決定する「交付決定日」について改めて確認しましょう。

    上記の通り、交付決定日は9月中旬(予定)となります。

    そして対象コストの支払い期限は交付決定日から2021年1月15日までです。

    9月中旬〜1月中旬に対象コストの支払いを行う必要がある!

    対象要件を満たしていても、経営資源引継ぎ補助金の支給を受けられるかどうかは国の審査が完了してからでないとわかりません。
    つまり、9月中旬の交付決定日まで対象コストの支払いを待つ必要があります。

    そして支払い期限である1月15日までには、対象コストの支払いを終えなければなりません。
    これらをまとめると、対象コストの支払い期限は9月中旬〜1月中旬の間となるのです。

    交渉によって実行日が変動することも多いM&Aにおいては、かなり短い期間設定であることを認識しておいた方が良いでしょう。

    まとめ

    以上、経営資源引継ぎ補助金の支給額上限や対象要件、手続きの流れをご紹介しました。
    新型コロナウイルスによる経済不況は依然として続いており、今後中小企業のM&Aは増えていくことが予想されます。

    そのため、M&Aに関する幅広いコストを負担してくれる経営資源引継ぎ補助金のニーズも高まっていくことでしょう。
    当記事が、経営難からM&Aを検討されている経営者の方参考になれば幸いです。

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