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法人廃業とは会社経営者が自主的に事業を辞めることで、債権回収や資産整理を行って会社そのものを消滅させる行為です。

手続き上は法務局の法人登記を抹消することが廃業に該当します。倒産や破産や経営破綻とは意味が大きく異なり、廃業はあくまでも自分の意志で会社をたたむことです。

余裕を持って廃業日を決定することが重要

廃業を選択できるのは、借入金や買掛金等を回収できる見込みがある会社に限定されます。

利益が出ているのに経営を辞めるのでは従業員は困惑します。そのため、従業員に事前通告し被害は最小限にすることが必要不可欠です。

しかし、廃業後の従業員の生活を考えると、実際はそう簡単に廃業を実施できません。なぜなら倒産や破産のように、債務の返済が追いつかず経営を辞める訳ではないからです。

廃業手続きは①廃業日②解散登記③清算④清算登記の順に行います。

廃業日は、経営の終了もしくはお店を閉店する日のことです。

廃業日の決定によって、すぐに経営を終了するわけではないので、余裕を持って廃業日を決定することが重要です。解散日が決定したら従業員はもちろん、取引先にも即座に知らせなければなりません。

解散登記では、法人は廃業届を提出しません。廃業届を提出する代わりに、解散の登記と清算の結了を実施します。

解散登記は法務局で行い、事実的な解散が決定します。清算では、会社に残っている財産を換価して分配、債務返済に充てます。

一方で、個人事業主は廃業届を提出します。個人で実施していた事業を法人として行う「法人成り」を選択した時です。個人事業主が法人として開業するには、1度事業を廃止します。

廃業届を提出した後、新たに登記申請を実行します。

具体的には個人事業の開業、廃業届出書、所得税の青色申告の取りやめに関する届出書、給与支払事務所等の廃止届出書、事業廃止届出書、所得税の予定納税の減額申請書、廃業届をはじめた各書類を提出することで、新たに法人として開業できます。

廃業における清算

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清算終了後は、社内に残っているのが現金の預貯金のみである必要があります。清算登記では、登記を実行します。

税務署や市区町村に清算申告書と清算届出書を提出することで正式に廃業となります。

法人廃業にかかる資金は、廃業の際には借入金や債務とは別に、申請や清算費用もかかります。申請時に発生する費用は、主に登録免許税と呼ばれています。

具体的には解散登記は30,000円、清算人選任登記9,000円、清算結了登記2,000円、この他にも清算等の手続きを依頼すると50,000円前後が必要です。

清算等の手続き以外にも会社の設備の廃棄にも資金がかかってしまう場合もあります。

清算人は義務を怠れば損害賠償も

法人が廃業する際には資産の処理をしなければなりませんが、廃業の過程で行われる手続きが先に述べた「清算」です。

清算は会社に残っている資産の換価処分や、債務の処分を行う手続きです。清算を行う際は清算人の決定から始めます。

清算人は清算業務を全面的に行う立場の者で、清算を行う会社を代表する存在です。

さらに監査役会がある会社は清算人を3人以上選定し、清算人会を設置します。

清算人の義務は現務の完了、債権の取り立てと債務の弁済、残った財産の分配があり、これらを確実に遂行することが求められます。義務を怠れば損害賠償を求められるケースもあります。

債権者利益にならない場合は破産手続きに

清算には大きく分けて2種類あり、廃業する会社の内情によって変わります。

一般的な清算は「通常清算」です。通常清算は、解散した会社が残った債務を全額支払うことができる場合に取られる清算方法です。

会社自ら(会社の清算人)が、会社資産である売掛金や在庫などを換価回収して、集まった資金で債務を支払い、清算手続を完了します。

倒産手続ではないので、裁判所の監督を受けることもありません。

一方、「特別清算」というのは、会社が債務超過、つまり、残っている会社資産では債務を完済できない可能性がある場合などに取られる清算方法です。

債務超過の場合は、通常清算の方法では会社を清算することができないのです。

特別清算を行う場合は、裁判所に「特別清算」の申立てをして、裁判所の監督の下で会社の清算を行うことになります。

重大な支障が発見された場合や、債務超過の疑いが出てきた場合は「特別清算」に移ることになります。

裁判所の監督の下、債権者集会を開き債権者の同意を得ながら清算を進めていきますが、債権者集会で債権者の同意が得られなかった場合や、債権者の利益にならないと判断された場合は破産手続きに移行することになります。

まとめ

最近では破綻より廃業の方が多いのが実情で、廃業や解散をしてしまった企業が増加傾向にあります。

原因としては後継者不足などで事業継承がうまくいかず廃業するケースが挙げられます。

一方、廃業以外の選択肢として 挙げられるのはM&Aで、事業や店舗を売却する方法がありますです。

M&Aによる事業承継を選択することで、経営者が売却金を得られるだけでなく、従業員の雇用が守られ、取引先との取引を続けられるメリットがあります。

いずれにせよ、最悪の状況を想定して、会社を廃業するタイミングや手続き、費用をあらかじめ知っておくことはとても重要です。

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