近年のM&Aの件数は増加傾向にあります。M&Aが増加する背景には少子高齢化問題、産業構造の変化、企業のグローバル化などがあげられます。
2019年のM&Aの件数は過去最高を記録する位にM&Aを行う企業は増えており、M&Aの件数は益々上昇しつつあります。
バブル経済崩壊で大幅に増加
日本のM&Aの件数は1993年から2006年にかけて大幅に増加しました。1993年は397件でしたが、2006年には2,775件とおよそ7倍に増加しました。背景にはバブル経済の崩壊があり、バブル崩壊後は日本経済や日本企業の成長率はバブル崩壊前に比べて縮小しました。
バブル崩壊以降には、経済が低成長化する一方で発展途上国が勢いを上げたことで企業間競争が激化、収益力が低下しました。規制緩和に無関係な分野の企業は、規制緩和による恩恵を受けるためや、会社の成長の起爆剤とするためにM&Aを積極的に行いました。
2011年から2019年にかけてもM&A件数は大幅に増加しました。2017年に3,000件を超え、2018年には3,850件の最高記録を更新、2019年には4,088件となって初の4,000件を突破しました。
背景には中小企業の事業承継があります。中小企業は経営者の高齢化が進行し会社の経営者の世代交代を考える時期に入っています。事業承継の方法としてM&Aを選択している中小企業が増加し、全体のM&A成約件数が増加しています。
さらに、企業法制の整備が進み独占禁止法改正による持株会社の解禁や株式交換および株式移転制度の導入、新会社法の成立といったM&Aに関わる法制度の導入が活発化したこともM&Aの増加の一因としてあげられます。
参考サイト:M&Aの件数は1年でいくつ?2019年の件数は過去最高!
経営者高齢化がM&A増加の大要因
M&Aが増加した最大の理由は経営者の高齢化と人口減少による事業承継の増加です。特に経営者がM&Aで期待することはシナジー効果(相乗効果)です。中小企業の経営者の高齢化は進んでおり、中小企業庁によると中小企業の経営者の3人に1人が60~70代となっています。
会社の経営は順調であるにもかかわらず、経営者自身の高齢を理由に廃業する企業が増えると日本経済は成り立ちません。政府はそのような会社の経営を継続させるために、事業承継の方法としてM&Aによる会社売却を推進しています。
後継者不足に対する対策としては、優秀な社員に事業を承継してもらう方法です。普段の業務の仕事ぶりを確認したうえで後継者に指名できるので、事業承継後の仕事内容に対して期待外れが起きにくいと言えます。後継者自身も仕事内容をよく理解しているので、不景気の波が襲ってきても親族内での承継よりうまく乗り切れる可能性が高いと言えます。
しかし、事業承継を行うためには、自社株を買い取ってもらわなければなりません。会社の規模によっても異なりますが、その費用は一般的に数百万円以上であることが多いです。
また、会社のトップに立つということは、会社が抱えている債務に対しても責任を負うことになります。現時点での業績が良く、借入金が少ない会社であればハードルは高くないかもしれませんが、経営状況によってはとても高いハードルになってしまいます。
後継者不足解決にM&Aを活用
後継者不足問題を解決するためのM&Aで会社を買い取ってもらうことです。M&Aにおける会社の譲渡は、買い手と売り手双方にメリットがあるのが特徴です。買い手としては時間をかけずに経営規模を大きくしスケールメリットを得やすくなります。
通常、企業規模を大きくしようとすると、新しい部署や支店の開設、新規に雇用・配属する従業員の教育などに大きなコストと時間が必要です。M&Aによって会社を買収することで、その企業の従業員や店舗などを活用することができるため、コストや時間を削減することができます。企業規模を大きくすることによって、物流コストの削減などのスケールメリットをより享受できます。
売り手側のメリットとしては後継者不足問題の解決以外にも従業員の雇用の確保、経営状況の改善が期待できます。後継者が見つからないと、最悪のケースでは会社の清算・廃業が必要です。
経営者本人は引退することになりますが、これからまだ働かなくてはならない世代の従業員にとって、雇用の確保は大きな問題となります。買収してもらうことによって、事業を継続してもらえれば従業員にとっても助かります。
まとめ
今後もM&A件数は増加傾向にあります。M&Aは後継者不足に悩む経営者が抱えている問題の多くを解決できる選択肢だと言えます。M&Aによる事業承継は自社内で解決できるものではありません。
買収してくれる企業が見つからなければ、名乗りを上げてくれる会社が現れるまで待つしかありません。買収してくれる企業を見つけやすくするためには、自社の企業価値を高めていきましょう。