基本合意書とは、買い手企業と売り手企業が互いにM&Aを進めることについて合意したら締結する契約書です。基本合意書はLOI(Letter of Intent)、MOU(Memorandum of Understanding)などと呼ばれることもあります。
基本合意書を締結することにより、売り手企業と買い手企業の双方がこれまでの交渉で合意してきた内容の整理と合意形成ができます。取引成立に向けて デューデリジェンス、最終契約や決済をスムーズに進行させると同時に拘束力を期待することができます。
秘密保持義務を互いに設定
基本合意書の一般的な記載内容は、以下になります。
①M&Aの取引形態(株式譲渡、事業譲渡等のスキーム)
②M&Aの対象範囲
③譲渡日
④譲渡価額
⑤スケジュール
⑥デューデリジェンス
⑦独占交渉権の有無
⑧秘密保持
⑨その他の同意事項
基本合意書の記載内容
基本合意書は、ひな形やサンプルがWeb上に掲載されているので必要な場合はダウンロードできます。
なかでも大事なのが、M&Aの価格記載です。価格がまだ決定していないケースもありますが、記載する価格にはある程度幅を持たせます。
例えばピンポイントで金額指定(例:5億円)、金額に幅を持たせて1〜5億円、最大金額を提示(最大15億円)など金額の幅を持たせる場合や、最大金額を提示するような記載があります。
デューデリジェンスの結果次第では妥当なM&Aの金額が変動します。基本合意書には、デューデリジェンスの結果をM&Aの金額に反映する旨を記載するのが無難です。
第二にM&Aのスケジュールを記載します。法務デューデリジェンスをはじめとするデューデリジェンスの開始から終了時期の期間を定め、先の最終契約(クロージング)の時期を決めたものを記載します。買い手側独自のM&A手続きに関するスケジュールとして、株主総会や取締役会などの実施についても記載しておきます。
第三にデューデリジェンスに関しての記載です。デューデリジェンスでは、さまざまな範囲を調査します。M&Aで調査する範囲は財務や税務、ビジネス、法務、ITなどです。基本合意書では、どの範囲までデューデリジェンスを実行するかを記載し実施する期間も盛り込みます。
デューデリジェンスの実施には、売り手企業の協力が不可欠ですので、協力を要請する意味でもM&Aで調査する範囲の明確化が必須です。
第四に秘密保持義務を記載します。M&Aでは、企業のトップシークレットに当たる情報を公開し合います。万が一情報が漏洩すれば、M&Aどころか今後の経営に支障がでます。
よってM&Aでは、秘密保持義務を互いに設定します。特に売り手企業は、M&Aの実行に際し数多くの機密情報を提供します。そのため売り手企業は、秘密保持義務の履行を相手に強く求める必要があります。
表面保証や価格変更など細かい内容は不必要
基本合意書の作成にあたって気を付ける点は株式譲渡や事業譲渡、合併、株式交換などの具体的なM&Aの方法となるスキームを明らかにする必要があります。デューデリジェンスを行った結果は、表明時効と異なる問題が発覚した場合などには修正できる内容も入れておきます。
売り手企業が買い手企業に対し、開示している財務状況や経営状況などの資料に虚偽がないことも確認します。M&Aの実施後は、売り手企業の役員や従業員がどのように取り扱われるかを記載します。
いったん基本契約を締結すると、買い手企業が独占的にM&Aの買取交渉を行える状態になります。
また、基本合意書には表明保証をどうするとか、価格変更はどういったときに行われるかといった細かい内容は必要ありません。今後デューデリジェンスや交渉を行う上での約束事を決める程度の意味合いしかありません。
書面にしてしまう以上は後の交渉において足かせになることは十分考えられます。これらを記載してしまうことで、後の交渉が限定されてしまうことになりかねませんので、ケースに応じた合意書を作成する必要があります。
まとめ
M&Aにおける基本合意書作成のポイントは、売り手側企業と買い手側企業で相反することから折り合いをつけて、お互いがこれから進めるM&Aの交渉をしやすくするための締結をしていく必要があります。
基本合意書はあくまで基本的な事項に関する確認書で、特定の条項を除いて法的拘束力をもたせないことが通常です。しかし、実際に基本合意を結ぶ際には事前に双方の希望する条件について専門家も交えた上で何度も交渉を重ねて作成していくことが必要になります。