ビルの模型と札束

M&Aにおいては、企業が他企業の発行済株式の過半数以上を買い取ることで子会社にしますが、親会社は子会社化により保有している自己株式を売却することが可能となります。子会社株式の売却で会計処理が財務諸表上の処理にどのように影響を及ぼすのかを把握することが大切になってきます。

子会社株式売却により売却損益が変わる

‪‪子会社株式を売却した場合には、持分比率が著しく減少し、連結子会社ではなくなってしまうケースもありますが、持分比率が減少しても連結の範囲に留まっています。まず、理解することは子会社株式の売却で財務諸表上の処理が変わるということです。‬‬‬‬‬‬‬‬‬

平成25年の会計基準の一部改正により、子会社株式を売却した場合の会計処理が変更されました。親会社と子会社の支配関係が継続している場合は、売却した株式に対応する持分を親会社の持分から減額し非支配株主持分を増額させます。

そのとき売却による親会社の持分の減少額と投資の減少額との間に生じた差額を子会社株式の売却損益の修正として処理していましたが、資本剰余金とすることに改められました。

個別財務諸表上においては、子会社株式の売却簿価と売却価額との差額が子会社株式売却損益として損益計算書に計上されています。しかしながら、連結財務諸表上は、支配が継続しているため売却損益は計上せず資本剰余金の増減として処理します。‬‬‬

連結財務諸表での株式簿価は経営成績に影響

子会社株式を売却した時に連結財務諸表と個別財務諸表で売却損益が変わってきます。同じ株式を売却した場合も、株式売却損益の発生は売却する株式により、連結と個別でいつも同じであるとは限りません。

関係会社以外の一般株式を売却すれば、連結でも個別でも同じ売却損益が生じますが、関係会社株式を売却する場合は連結と個別では売却損益が変わってきます。

個別財務諸表上においては、子会社株式の売却簿価と売却価額との差額が子会社株式売却損益として損益計算書に計上されています。

関連会社株式は、時価の著しい下落を除いて原則として取得原価で評価し、親会社の個別財務諸表ではその価値の上昇は表現されず含み益として帳簿外の所有になり、含み益のある関連会社株式を売却すると、個別財務諸表上では関係会社株式売却益として計上されます。

また、連結財務諸表では、関連会社株式の簿価は業績に伴い変動しています。関連会社が利益を上げていれば、関連会社の利益剰余金は増加しますので、親会社持分に相当する金額は関連会社株式勘定に取り込まれます。

連結上の関連会社株式の簿価は、関連会社の純資産額に対応することで、関連会社株式の売却価額が帳簿上の純資産により決定され連結上株式売却損益は発生しないことになります。

連結子会社が外部会社となった場合も売却損益の修正が必要

資料を提示される経営者
‪‪子会社株式の売却により、連結範囲から除外され‪関連会社になった場合は残存する株式は持分法で評価します。子会社であった期間の‪収益や費用は連結損益計算書に反映されることになります。

では、株式の売却により、連結子会社が外部会社となったケースはどうでしょう。子会社から関連会社になった場合と同様で、一部売却により支配を失うため、個別財務諸表上で計上の売却損益修正が必要になります。

売却後の投資勘定も個別財務諸表上の帳簿価額に修正します。この際の連結財務諸表上の簿価との差額は連結除外に伴う利益剰余金減少高の科目で処理します。残存する株式は‪個別貸借対照表上の帳簿価額をもって評価します。‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬

また、連結範囲から除外する場合、過去の子会社株式の追加取得および一部売却等によって生じた資本剰余金は、引き続き連結財務諸表上の資本剰余金として計上します。

連結の範囲および持分法の範囲から除外されても、過去の追加取得や一部売却等の取引で計上された資本剰余金は取り崩さず、連結財務諸表上はそのまま計上されることになります。

支配継続中の追加取得や一部売却等の取引によって生じた資本剰余金は、子会社に帰属するものではなく、親会社に帰属するものだからです。なお、資本剰余金の額が負の値になり、利益剰余金から減額する処理を行っていた場合にも、当該処理は引き継がれます。

連結財務諸表上で費用処理した取得関連費用がある場合は。個別上の売却簿価に含まれている付随費用のうち売却部分に対応する額を子会社株式売却損益の修正として処理します。支配喪失して持分法適用会社になった場合には、関連会社株式の投資原価には支配喪失以前に費用処理した支配獲得時の付随費用は含めません。

まとめ

子会社株式を売却した場合、子会社の資本に対する親会社の持ち分は減少し少数株主持分は増加します。売却した持分に対応するのれんを減額するかどうかにかかわらず、かかる資本処理と親会社持分に帰属する利益計算を重視する指向との折り合いが問題となっています。

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